ビッグデータ時代におけるマーケティングのあり方

情報技術の進展とともに、企業や個人が保有するデータ量は飛躍的に増えている。このような企業の内外で生まれるデータ(ビッグデータ)を保管するだけではなく、収集・管理し、分析することでいかにマーケティングに役立てていくのかが、いま重要視されている。

最近のIBMの調査によると、データ主導型活動の多さと、そのマーケティングの成功は相関するとしている。急速に注目を集めるようになった「ビッグデータ」と、そのマーケティングへの活用について見ていこう。

ビッグデータを活用したマーケティング

ビッグデータ時代の到来

“ビッグデータ時代の到来”というが、なにも今まで存在しなかった新しい情報がどこからか降って湧いたという話ではない。目の前に存在はしたけれど今まで“データ化”されなかった情報。例えば人々の一連の購買行動などがGPSデータやソーシャルメディアへの投稿により収集・分析可能な“データ”という形で可視化されたということだ。

では、その新たに利用可能になった情報(ビッグデータ)をマーケティングに活かす、とはどういうことだろう?

観光業界では、携帯電話やスマートフォンの位置情報機能、ICカード機能を活用して、観光客の動線を容易に収集できるようになった。すると、観光客はいつ、どこから来ているのか、どのような属性の人たちなのかを知ることができる。観光客の行動を可視化することで、今後の取り組みに活用ができるのだ。

求められる「データサイエンティスト」たち

多くの企業は、典型的なデータ分析やレポートなどのビッグデータは貯蓄してきたものの、分析によってマーケティングに役立てるまでには進んでいない。また、過去長きにわたりデータ分析を試みたものの、困難・挫折を経験しているところも少なくない。
そんな中、ビッグデータ時代の中心的なポジションとしていま最も必要とされているのが「データサイエンティスト」と呼ばれる人々だ。
ビッグデータをマーケティングに活かすためには、集めた情報を適切に抽出、分析しなければならない。さらに、その意味を解釈し、仮説立てをおこなって改善施策へつなげる施策立案能力まで、非常に高いレベルのスキルが必要とされる。

事例を挙げよう。
Facebookでは、下記のようなスキルをもった「データサイエンティスト」を募集している。

Facebook社のデータサイエンティスト募集要項

  • 定量的アプローチを用いて分析的な課題を解決した豊富な経験
  • 多様なソースからの複雑で、大量かつ高次元のデータを容易に操作し、分析できること
  • Python,PHPなど、少なくとも1つのスクリプト言語を自由に扱えること
  • RDBとSQLに精通していること
  • R,MATLLAB,SASのような分析ツールについて専門知識を有すること
  • 大量のデータセットを扱った経験、MapReduce,Hadoop,Hiveなどの分散コンピューティングツールを使用した経験

一見してお分かりだろう。これらのスキルを全て兼ね備えた人材は極めて“希少”だ。
ではどうするべきか?
一つの突破口を、リクルート社の事例に見ることができる。

リクルート社のビッグデータ担当者はこう話す

大小合わせて100以上あるリクルート社のウェブサイトの運営に加えて、データの活用・分析を行うリクルートテクノロジーズ。

同社では、ビッグデータの活用に取り組む際、前述のFacebookが求めているような要件をすべて1人でまかなえる理想の「データサイエンティスト」は社内には“いない”と割り切った。チームや組織で担保しよう、と考えたのだ。
ビッグデータの活用に必要とされる要素は大きく3つにわけることができる。分析スキル、技術スキル、そしてマーケティングや施策立案といったビジネススキルだ。従来であれば別々の部署が担っていたこれらの機能を、同社では「ビッグデータグループ」の名の下に1部署に統合した。
まず行ったのは “席移動”だったという。
技術チームと分析チームを同じフロアにすることで、コミュニケーションが円滑になり、目的が共有された。スペシャリスト同士が恊働することで、課題に対する思わぬ突破口が開け「1+1=3」となるような事例も出てきている。

ビッグデータだからといって“ビッグ”である必要はないし、必ずしも複雑なことをやる必要はない。
肝心なのは“得られた情報をどう活かしてビジネスの目標を達成するか”なのだ。

時代の波に取り残されないために

いつでも時代の流れに合わせたマーケティング手法を行うことが大切だと言われている。
しかし、テクノロジーの発展スピードに、追いついていくことは簡単なことではない。
現時点で、多くの企業にとって理想の「データサイエンティスト」人材の採用や育成は容易ではないだろう。
だが、この数年で「顧客を知り、商品を売るために使える情報」が飛躍的に増加していることは事実だ。それを扱うための技術・ツールも広く利用可能になっている。

経営層やマーケティング担当者がいち早くその事実を受け入れ、限られたリソースの中で部分的にでも“データ”を活用したマーケティングを志向することが差を生むのではいだろうか。


参考URL:

齋藤麻紀子:「ビジネスゴールの達成が全て。ビッグデータは必ずしも“ビッグ”である必要ない」 席移動からはじまったITとマーケティングの融合
http://markezine.jp/article/detail/17058

デジタル・マーケティングは、ビッグデータの活用が大きな差を生む
http://diamond.jp/articles/-/38977

ビッグデータ活用は水面下に潜る? 「情報」から価値を見いだす「知識」が、再浮上の鍵(東京大学先端科学技術研究センター特任教授 稲田修一氏に聞く)
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/interview/20131225_628810.html

稲田修一:マーケティングを変えるビッグデータ
http://www.mlab.t.u-tokyo.ac.jp/ict-consortium/jimu/20130527marketing.pdf

ビッグデータは企業のマーケティングをいかに進化させるか
http://www.advertimes.com/20131204/article137314/

【リサーチの新常識】「ビッグデータ」分析に取り掛かる前に知っておきたい基本ポイント
http://smmlab.aainc.co.jp/?p=23550

山下竜大:散乱するビッグデータをマーケティングで活用
http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1310/04/news027.html


画像:http://pixabay.com/en/road-sign-attention-right-of-way-63983/

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