シンガポールで世界初の自動運転タクシーが試験走行開始

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者2人が設立したシンガポールの新興企業ヌートノミーは8月末、シンガポールで世界初となる自動運転タクシーサービスのテストを開始したと発表しました。米ペンシルベニア州ピッツバーグで、自動運転車の公道試験を予定している米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズに数日先んじての開始となりました。アジアのテクノロジーハブを目指すシンガポールの現状を紹介します。

自動運転タクシー、本格普及は2018年か

自動運転タクシーとして採用された車両は、三菱自動車のi-MiEVとRenault Zoeの2種。いずれも自律走行が可能な電気自動車です。今回の公開実験の舞台となったのは、シンガポールのビジネス中心部ワンノース。アプリを使って自動運転タクシー(ロボタクシー)を呼び出し目的地まで利用、試験中の運賃は無料です。
自動運転とはいえ、試験期間中は運転席にヌートノミーのエンジニアが乗車してシステムを観察し、万が一の際は制御するそうです。
同社は、公開実験を通じてアプリの性能や乗車体験などに関するデータを収集し、2018年にはシンガポールでの商用ロボタクシーサービスを立ち上げる計画です。

「ブレグジット」契機にフィンテック企業が移転

アジアの金融センターとして知られるシンガポール。昨今は、金融とテクノロジーが融合した「フィンテック」の振興を目指し、政府による資金の拠出など産業振興を進めています。アジアの金融ハブの地位を争うライバルの香港に差をつけ、同分野でアジアの覇権を握る意向です。シンガポールには約200社のフィンテック企業が存在し、その多くは起業2年以内のスタートアップだといいます。
先ごろ、英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決定したことを受け、英国ロンドンに拠点を置くフィンテック企業の一部も、サービス開発競争が激化する英国からシンガポールへの移転に関心を示しているという見方もあります。
ただ、リスク回避志向の強い金融規制や、数年前から続く外国人労働者を規制して自国民を優先する移民政策などが障害になっているという声もあります。

人材難をロボットが救う?!

シンガポールがこうしたテクノロジー産業に力を入れる理由として、伝統的な主要産業である海運や製造業が低迷が挙げられます。これは世界的な景気減速や資源安の影響によるものです。また、外国人労働者の受け入れ規制強化で、サービス業を中心に人材難が発生していることが背景にあると考えられます。
高給・高学歴のシンガポール人は低賃金で仕事のきついサービス業には就きたがらないため、飲食店や清掃などの分野で外国人労働者を受け入れ、人材不足を補ってきました。これからは、サービスロボットを導入して、労働者を補っていく意向です。実際に、飲食店ではタブレット端末での注文システムが普及しているほか、お皿を運ぶウエイターロボットも登場しています。また、日本の高速道路のサービスエリアに昔設置されていたような、ちょっと懐かしい食べ物の自動販売機を導入したカフェ、「ベンド・カフェ(VendCafe)」もオープンしました。同カフェはシンガポール通産省傘下の規格生産性革新庁と住宅開発庁が共同で試験導入したもので、24時間利用可能な店内には、中華系の麺料理を提供する自動販売機とダイニングテーブルが設置されています。自動販売機を導入することで、外食産業で不足する労働力を補う意向です。
2016年シンガポール政府は、今後3年間で4億5000万シンガポールドル(約340億円)をロボット開発・配備資金として支出すると発表しました。ただし、世界的に経済が減速するなかで設備投資が落ち込み、期待されたほど普及していないという声もあります。アジアのテクノロジー大国を目指す同国の、今後の展開が注目されています。


参考:

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